公立校からプロ入りした先輩追って 市西宮のエース若林(朝日新聞デジタル)

(15日、高校野球東兵庫大会 市西宮3―1六甲アイランド

 初球は「まっすぐ」と決めていた。東兵庫大会2回戦。市西宮のエース若林秀真(3年)にとって、憧れを超えるための戦いが始まった。

【写真】東兵庫大会 六甲アイランド―市西宮 一回を三者三振に終わらせ、ほえる市西宮の若林=15日午後0時16分、明石トーカロ、小俣勇貴撮影

 一回、直球を勢いよく投げ込んでいく。決め球にもして、三者三振。思わず、ほえた。「去年の山本さんも初戦の初球は直球だった。『チームに勢いをつけたいから』って」

 山本拓実。1学年上のエースで、身長は180センチの若林より13センチ低い167センチ。小柄でも直球は最速147キロ。その実力だけでなく、「地元の公立校からプロへ」と努力を重ねる姿を見て、「かっこいい。ああなりたい」と感動した。小さくて大きな先輩は、昨秋のドラフト会議で中日から6位指名を受け、プロの世界に挑んでいった。

 若林は昨夏の兵庫大会準々決勝が忘れられない。延長戦で報徳学園に1―2で敗れた後、山本から「おまえらは勝てよ」と泣きながら託された。昨年末にあったプロ入り前の最後の練習。キャッチボールを終えると、無言でボールを手渡された。「あとは任せた」と言われた気がした。

 自然と投球スタイルも似通う。最速は143キロと劣るが、直球で強気に攻める。中盤に入って六甲アイランド打線が直球に慣れてくると、スプリットの割合を増やして狙いをかわした。「緩急をつけるのも、山本の教えです」と吉田俊介監督は目を細める。12三振を奪い、1失点完投。チームは3―1で3回戦に駒を進めた。

 ここまで山本を追い続けてきた。この夏は、違う道をたどろうと思っている。「プロはまだ先の話。いまの目標は甲子園です」=明石トーカロ(小俣勇貴)