大小2種類の足跡…「クマだっ!」 2日連続でトウモロコシ(産経新聞)

クマの目撃情報が相次いでいる山形県で15、16の両日、2日続けて長井市の家庭菜園がクマに荒らされた。近くには20センチ以上の成獣とみられるクマの足跡が残り、近くにトウモロコシの残骸が…。クマの怖さを知る地元ハンターは「山と人の住む地域との間に緩衝地帯を設けていく以外、クマからの害を避ける方法はない」と断言する。

 被害があったのは、長井市平山の建設業、玉置勝久さん(73)の家庭菜園。家庭や近所に配るため野菜作りをする玉置さんが異変に気づいたのは15日午前4時半ごろ。約10メートルの畝に2列に植えたトウモロコシ畑の防虫ネットが引き下げられ、トウモロコシが食べられた跡が残っていた。トウモロコシは40~50本が根こそぎ倒され、傍らには皮と芯が無数に転がっていた。

 付近は20センチと8センチの大小2種類のクマの足跡が残っていた。思わず玉置さんは「クマだっ!」と思ったという。畑半分以上がやられていたという。

 15日午後7時過ぎには再度、菜園に行き、異常がないことを確認。しかし、16日午前5時過ぎに畑の様子を確認に訪れると、残っていたトウモロコシ約10本が食い荒らされていた。

 妻のさち子さん(66)は「昨日のクマでありませんね。足跡の大きさが違う」と振り返る。16日朝に見つかった足跡は優に20センチを超え、15日朝に見つかったクマより大きいものだった。家庭菜園から約5メートル離れた草むらには、クマが通れるような穴が開いており、「ここから出入りしているのでしょう」とさち子さん。

 長井市と長井署は15日から「クマが出没注意」という上りを立て、住民に注意を促している。だが、クマの被害を防ぐには抜本的な対策が必要だと専門家は指摘する。

 地元西置賜猟友会長井支部伊藤一義支部長(68)は昨年11月30日、有害駆除のため葉山(標高1237メートル)に生態調査に出た際、農道を約400メートル上ったところで子連れの母親クマに飛びかかられ、後頭部から額、左足を噛まれる重傷を負った。伊藤さんは言う。「以前は奥の山の手前の山が“緩衝地帯”になり、人とクマの住む場所を分けていたが、いまは、この人が管理する緩衝地帯は餌が得られ、人も襲ってこないと気づいたクマは安心してここに降りてきているんです。もはや手の打ちようがない」。

 夜行性といわれるクマだが、長井市内では牛の飼料となるコーンなどを栽培する畑地で白昼、クマがコーンを食べる姿が度々目撃されている。伊藤さんは「住民も草刈りをし、緩衝地帯の整備を進めていかないと、クマの食害はもっとひどくなる」と警鐘を鳴らしている。