寒川3年・吉田龍生主将「挑戦者として挑めた」(産経新聞)

「戦力的に、負けて当たり前。挑戦者として挑めた」。高校野球南神奈川大会2回戦でシード校・鎌倉学園に敗れた寒川3年・吉田龍生主将は、きっぱりとした口調で言い切ったが、表情には悔しさがにじみ出ていた。

 チームは今春まで、選手が3年生4人、2年生5人の計9人。当初は9人の同級生がいたが、自由な雰囲気の高校生活に流されたのか、1人、また1人と部を去っていった。

 昨夏、「声が大きく、怒られても下を向かない」という前向きな性格を買われて主将に指名されたが、試合には勝てなかった。公式戦は0勝6敗。少ない人数で苦戦を強いられ、悔しい思いを味わってきた。

 だが心は折れなかった。「好きで始めた野球。最後まで絶対にやり通すぞ」と、今春は部員集めに奔走。部活動紹介ではダンスを披露し、「親しみやすい先輩」をアピールした。

 それが功を奏したのか、9人の新入生が入部。同じタイミングで実力校・藤沢清流で指揮を執った浜田雅弘監督が就任した。強豪校のBチームと練習試合を組み、強豪の野球を皮膚感覚で吸収した。チームが変わっていくのを感じていた。

 この日は序盤から相手投手の球を捉え、チームは5安打。自身も顔を真っ赤にしながら「諦めるな!」と味方を鼓舞し続けた。負けはしたが、強豪相手に自分たちの野球をぶつけられた。試合後は「恵まれた環境ではなかったかもしれないけど『野球部のプライド』を持ってやり通せた」と悔しさのなかにも達成感をかみしめた。

 本格的な野球はこの日で最後だが、「ものごとを最後までやり通すことの尊さを学べた高校野球生活だった」。静かにユニホームを脱ぎ、人生の次章へ進む。