バドミントンから野球部に転部「人任せな自分変われた」(朝日新聞デジタル)

大会2日目の15日は、4球場で9試合があった。シード校の古川学園、春の中部地区大会優勝の仙台三は好発進。春の宮城県大会で優勝した東北は、八回まで2点を追う展開に。仙台城南や仙台一、石巻工、塩釜など、春の県大会出場校も勝ち上がった。

【写真】七回に本塁へ返球する鹿折天人君=石巻市


(15日、高校野球宮城大会、古川工10―3宮城広瀬)

 宮城広瀬の鹿折天人(たかと)君(3年)は七回表、ランナーコーチのヘルメットを帽子にかぶり直し、元気よく右翼手の守りについた。「こっからー!」。背中の「9」が輝いていた。

 小学生でリトルリーグに入ったが、打撃が苦手で「野球はあんまり好きじゃなかった」。試合には出られず、高校からバドミントン部に。グラウンドではなく体育館で、ボールではなくシャトルを追った。実力も評価され、楽しかった。

 でも、昨年夏のこと。甲子園で大阪桐蔭を破る仙台育英をテレビで見て、「やっぱり野球をやりたい」という気持ちが抑えられなくなった。転部を決め、バドミントン部の仲間に伝えた。「え、なんで?」。戸惑われたが、最後は「おまえが行きたいならがんばれ」と送り出してくれた。

 2年のブランクは大きく、野球部のランニングでは1人遅れた。「甘くないな」。心が折れそうになるたび、「送り出してくれた仲間に合わせる顔がない」と、自主練習を重ねた。

 春の地区大会は、ほかの3年生がみんな1桁の背番号をつける中、自分だけ「10」に。ベンチでのサポートに徹しようかと悩んでいたが、穀田長彦監督は「まだ見捨ててないから」と言ってくれた。苦手な打撃に向き合い、1桁の背番号を目指した。

 右翼で守る七回、差は6点。2死二塁で飛んできた打球を「コールドを阻止してやる」と本塁に返した。二塁走者が本塁へ。「セーフ」という審判の声で、相手スタンドが沸いた。その裏も得点できず、チームはコールド負けした。

 転部したことは後悔していない。「人任せな自分を『チームのために』と動ける自分に変えてくれた」と思うから。悔しさは後輩に晴らしてもらう。「自分たちを越えてほしい」と笑った。(窪小谷菜月)