セットプレーの重要性、水差すVAR…大会象徴した決勝(朝日新聞デジタル)

(15日、フランス4―2クロアチア ワールドカップ決勝)

 決勝が今大会を象徴していたように思う。

【写真】優勝を決め、ピッチで喜ぶエムバペ(中央右)らフランスの選手たち=長島一浩撮影

 前半の3ゴールが示したのは、セットプレーの重要性。フランスは勝利には優れた個と整備された組織の両方が必要なこと、クロアチアは攻守で自ら仕掛けることがいかに大切で心を打つか。そして、最後まで試合に水を差したビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)である。

 全64試合の平均得点は2・64で、0―0は1試合のみ。1次リーグから見応えある試合が多かった。

 日本以外にアジア、アフリカから16強に残った国はなかったが、かつて強豪がした、1次リーグでエンジンを温めておいて決勝トーナメントにピークを持っていくような余裕はなくなった。前回王者の1次リーグ退は3大会連続。4年前に突出していたドイツですら世代交代を含めた進化を怠れば失速した。

 準決勝の終えた翌日に、興味深い言葉を聞いた。大会を分析するテクニカル・スタディー・グループ(TSG)から出てきた「グアルディオラ・エフェクト(効果)」。W杯に参加していない知将の影響が強く出ているという。

 現在、イングランドマンチェスター・シティーを率いるグアルディオラ監督は、スペインのバルセロナで2008~12年の4季、ドイツのバイエルン・ミュンヘンで13~16年の3季を指揮した。

 それぞれのクラブの所属選手を中心にしたスペインが10年、ドイツが14年にW杯で優勝。グアルディオラ監督の後を追うようにして王者が生まれている。今大会はイングランドが28年ぶりに4強入りした。

 TSGのロクスブルク氏は「ポゼッションはただボールを保持するのが目的ではなく、攻め崩すためのものでなければならない」と警鐘を鳴らした。グアルディオラが広めたポゼッションサッカーに頼ったドイツやスペインには、限界が見えた。さらに独自の発想で戦術を発展させ続ける必要性を訴えている。

 ポゼッションか、縦への速い攻めかといった二者択一の議論は時代遅れということだ。ベルギーやクロアチアのように柔軟に戦術を変化できるチームを作らないと勝ち上がれないと、W杯は示している。