オリックスにおける増井加入効果 リーグトップ22Sだけじゃない無形の財産(デイリースポーツ)

オリックスは前半戦を3位タイ、4年ぶりの貯金ターンで折り返した。大きな原動力となったのは福良淳一監督(58)が「100点」と称した投手陣。中でもリーグトップの22セーブを挙げた守護神・増井浩俊投手(34)の存在が大きいと首脳陣は口をそろえる。FA移籍してきた右腕の、投球だけではない“効果”がその理由だった。

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 前半戦総括の中で福良監督は「増井は助かってます。しんどいところでも粘り強い、あきらめない」と最大級の賛辞を贈った。

 38試合で1勝0敗22セーブ、7ホールド、防御率1・56とどれを取っても抜群の成績だがそれだけではない。ブルペンを預かる平井投手コーチが言う。

 「平野が抜けて大きな柱を失ったけど、増井がそこにしっかり入ってくれた。最後のとりでとしての存在感と若い投手たちへの影響力。これが大きいですね」

 昨オフに平野がダイヤモンドバックスへ移籍。その穴を埋めるべく日本ハムからFAで獲得した。戦力的な部分だけではないプラスがあるという。

 その一つが吉田一の成長だ。現在は七回を任されているが、開幕メンバーからは漏れた。4月初旬に昇格すると、最初はビハインドの展開から次第にポジションを上げ、勝ちパターンまで上り詰めた。その理由を吉田一が明かす。

 「増井さんのおかげです。キャッチボールを一緒にやらせてもらって勉強になりました。1球1球を本当に大事に投げる。あれだけ長く、第一線でやられている理由はフォームにもあると思う。無駄な動きがない」

 技術的な話から心理面、コンディショニングまで出し惜しみすることなく披露してくれる。その成果がリーグ3位の18ホールドポイントにつながった。

 沢田はトレーニング方法から教わった。

 「増井さんに教わってボールが変わりました。球速も上がりました」

 沢田の球速は昨季の148キロから152キロまで上昇。奪三振率は3・46から8・89に大幅に上がった。

 増井は「例えば下半身のトレーニングなんかでうまくできていなかったので、こういうやり方があるよと言う感じで教えた。すると目に見えて良くなる。教える面白さを感じています」と話す。

 “兼任コーチ”の役割まで果たす増井だが、古巣日本ハムの関係者に伝えると首をかしげた。

 「人に教えるタイプではなかった。どちらかというと我が道を行くタイプだった」

 増井本人も「そうですね。日本ハムのときはそういうことはなかった」と認めた。

 なぜなのか、平井コーチはこう分析した。

 「人間的にもいいし、練習に対する取り組み方も手を抜かないからお手本になる。だから若い選手たちが聞きに行くのだと思う」

 救援防御率は12球団2位の3・09。技術面、精神面だけではなく、若手の成長も促すFA右腕の存在は大きい。22年ぶりの優勝へ向けて臨む勝負の後半戦。その存在感は高まるばかりだ。(デイリースポーツ・達野淳司)