パ新人王大本命 オリの由伸の素顔 大谷が認め筒香をワクワクさせた(スポニチアネックス)

オリックスの高卒2年目右腕が凄い。セットアッパーを務める山本由伸投手(19)だ。12球団トップの26ホールドポイント防御率1・29の快進撃で、監督推薦で出場したオールスター戦でもDeNA・筒香との真っ向勝負で名を売った。パ・リーグ新人王の最有力候補。後半戦注目の新星の素顔に迫った。 (湯澤 涼)

 ファウル、ファウル、またファウル。筒香のタイミングは合っていく。それでも山本は同じ直球を投げ続けた。13日の球宴第1戦で見せた、日本の主砲との9球勝負。最後は本塁打を浴びたが、筒香に「これからどうなっていくか、楽しみですね」と言わしめた。

 直球の最速は154キロ。レギュラーシーズンでは、これに150キロに迫る高速カットボール、鋭く落ちるフォークを交えて終盤のマウンドを守る。落ち着き払った姿に19歳のあどけなさはない。

 「数字を見ると良い数字が残っているので、良いようには進んでいるかなと思います」

 全て救援で35試合に登板し4勝1敗1セーブ、22ホールド、防御率1・29。1年目の昨季は94年の平井正史以来、球団23年ぶりの高卒新人勝利を達成したとはいえ先発5試合で1勝1敗、防御率5・32にすぎなかった。チーム事情で中継ぎを任され、リーグ歴代3位の15試合連続ホールドポイントも記録。95年に新人王と最優秀救援タイトルを獲った平井に似た道をいく。

 「先発への思いは別にありますが、中継ぎも学ぶことは多い。大事な場面で良い打者と対戦できるのはプラスだと思っています」

 昨オフのこと。プロ初勝利をつかんだ投球フォームを捨てた。始動後にグラブを巻き込む形で投じていたが、グラブを捕手方向に真っすぐ伸ばして体重移動するフォームに改造。陸上競技やり投げのような器具を使ってイメージを高めた。「左手を使えていないことに気付いた。その時だけ良くても数年後に苦しくなると思った」と理由を明かす。

 試行錯誤の最中だった2月の春季キャンプでは制球が悪化し球威も低下。首脳陣からフォーム再変更も打診された。それでも、進化を誓った自分の判断を貫いた。「強い思いがあって自分を信じてやってきた。福良監督、チーム、自分のためにも、絶対に良いところを見せてやろうと思っていました」。今季の1軍初昇格は4月24日。固めたスタイルで、快投ロードに乗った。

 巨人・高橋由伸監督と同じ名は、母から「由」、父から「伸」の1字ずつを授かり祖母が付けた。土台は中学まで過ごした岡山を離れた都城(宮崎)での高校3年間。食事量を増やし肉体改造に励んだ。間食は2リットルのタッパーに詰め込んだ白米を毎日たいらげ、入学時の体重60キロが77キロに増加。球速は約20キロアップして150キロ台に到達し、プロの注目を集めた。「人としての部分も指導してもらいました。マウンドでの態度に厳しかった。野手やベンチが見ているんだからと」。2年秋まで指揮を執った森松賢容監督と、後任の石原太一監督。恩師の言葉を忠実に守る。

 エンゼルス・大谷も認める好素材。昨年9月26日の対戦で山本のスライダーで空振り三振に斬られた大谷は、日本ハムの同僚らに「今年(17年)やった中で一番良かった」と言ったという。「体自体が強くなっている感覚もある」と山本。目指す新人王の称号は、球界トップクラスの選手への足掛かりだ。

 ≪最年少最多HPなるか≫山本(オ)はパ最多の26HP(ホールドポイント=ホールド+救援勝利)をマーク。防御率は1.29で、30試合以上に登板のセ、パ34人の中では山崎(D=1.13)、ハーマン(楽=1.24)に次ぐ好成績だ。なお、山本は今季が20歳シーズン。最多HPの年少獲得記録は、05年藤川(神)の25歳となっており、最年少奪取の期待がかかる。

 ≪山本 由伸(やまもと・よしのぶ)≫

 ☆生まれとサイズ 1998 年(平10)8月17日生まれ、岡山県備前市出身の19歳。1メートル77、80キロ。右投げ右打ち。

 ☆球歴 伊部小1年で野球を始め、都城(宮崎)では2年春からエース。3年夏は宮崎大会3回戦で敗れ、甲子園出場なし。16年ドラフト4位でオリックス入団。

 ☆プロ初勝利 昨年8月31日のロッテ戦で5回2失点に抑えた。高卒新人勝利は球団23年ぶり。

 ☆趣味 バス釣り。「海も良いけど、池ですね。ブラックバス。プロに入ってからは控えていますが、小学校の時から。デカいのも釣ったことあります!」

 ☆好物 寿司のイカ。「パリッとした歯ごたえのやつです。硬いのはちょっと…」