カープ丸 夏の甲子園を語る「夢のようでした」(デイリースポーツ)

高校野球の地方大会が始まり、各地で球児による熱戦が繰り広げられている。第100回全国高校野球選手権大会(甲子園)は8月5日に開幕。平成最後の夏を前に、広島・丸佳浩外野手(29)が、千葉経大付(千葉)高校時代を振り返った。

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 夢のような時間は瞬く間に過ぎていった。丸にとって甲子園は特別な場所だ。2年夏、地方大会を勝ち抜き、憧れのグラウンドに立った。青々と茂った外野の芝生、黒土の香り、アルプスの応援…。中3の夏、父と初めて甲子園を訪れた。あのとき、「近くて遠い」と感じた夢の舞台で、丸は初めて高校野球を楽しんでいた。

 「地方予選は負けたら終わり。恐怖、不安があったけど、甲子園に出ちゃうと、初めて野球を、高校野球をやっていて楽しいなと。甲子園でやっていること自体が夢のようでしたし、一瞬で終わったという感じでした」

 1回戦でいきなりプロ注目の好投手・大嶺(ロッテ)を擁する八重山商工と対戦した。同じ千葉で同学年の成田・唐川(ロッテ)と対戦経験はあったが、1学年上の右腕の速球は「質が違った」と大きな衝撃を受けた。

 「野球をやっていて一番速かった。140キロ中盤まで出ていて、高めの真っすぐは全然当たらなかった。ヒットも打ってますけど、真っすぐを待っていて変化球が来たところにたまたま当たったという感じだったので」

 「3番・右翼」で出場した丸は甲子園初安打を記録したものの、延長戦の末、敗れた。だが勝敗以上に、聖地に立てた喜びに心は満たされていた。それほど「夏の甲子園」への憧れは強かった。

 「高校野球をやっているときはプロとかより、甲子園に出たいと思っていた。プロ野球選手になりたいと言っていたのは小、中学校までです。高校生になったらそんなこと言っている場合じゃない。そんなこといいから、甲子園に出たいと」

 丸は3年春のセンバツ大会にも出場している。エースとしてマウンドに立ち、1回戦を突破。初勝利を手にしたが「センバツは最後の最後ではないので。楽しかったけど、夏とは違う」。そして、もう一度、戻ってくると誓った3年夏はまさかの予選敗退。松本監督と目指した全国制覇の夢はかなわなかった。それでも、涙はない。未練もやり残したことも「ないない、全然ないです」と振り返る。最後の夏は「高校野球の一区切り。野球を続けるか、続けないかが分かれ道なので」。次のステージを目指して再び走り出した。(デイリースポーツ・杉原史恭)