社説:海の日 悲しい水難事故なくせ(京都新聞)

きょうは「海の日」。夏休みを迎え、レジャーで海に行く機会が増えるこの時期に、自然に潜む危険を知り、安全最優先で行動することの大切さを再認識したい。
 警察庁のまとめによると、2017年に全国の海や河川、湖沼、プールなどで発生した水難事故は1341件(前年比164件減)で、水難者は1614人(128人減)。このうち死者・行方不明者は679人(137人減)だった。いったん発生すると、命にかかわる重大な事故になる可能性が高いのが水難の特徴といえる。
 都道府県別の件数は沖縄県が81件と最多で、北海道73件、新潟県57件と続く。京都府は16件で滋賀県は30件。死者・行方不明者はそれぞれ7人と14人だった。全国の死者・行方不明者を場所別でみると、海が56・6%を占めた。
 こうした悲しい事故をなくすためにまず重要なのは、危険な場所に近づかないという大原則だ。
 海には急な深みや激しい流れに加え、海藻が遊泳者に絡みつくなどの危険もある。「危険」「遊泳禁止」といった掲示や標識がある場所で泳いではならない。
 岸に近いところでも、沖に向かって速く流れる「離岸流」には特に注意がいる。もし入り込んでしまった場合は、流れに逆らわず岸と平行に泳ぎ、抜け出してから岸に向かうようにしたい。
 健康状態にも気をつけてほしい。体調不良や睡眠不足は事故につながる恐れが高まる。酒を飲んで水難事故にあうと死亡率は約2倍になるとされ、飲酒しての遊泳は避けるべきだ。入念な準備運動も欠かせない。
 溺れている人を見つけた場合は、すぐに海に入って助けようとするのではなく、大声を出して周囲の人に知らせるとともに、救助機関に速やかに通報することが重要だ。
 幼児や泳げない子どもが水遊びをする際は、必ず大人が付き添い、目を離さないようにしなければならない。混雑する海水浴場では、子どもが見失った保護者を捜して一人で海に入り、溺れるケースもあるという。
 今年2月には海中転落による死亡・行方不明事故を防ぐため、プレジャーボートなどすべての小型船舶の乗船者についてライフジャケットの着用が原則として義務化された。生存率は着用によって2倍に高まるという。救助を求めるために携帯電話を防水パックに入れて携行することと合わせ、新ルールをしっかり守りたい。
[京都新聞 2018年07月16日掲載]