昨夏Vの藤枝明誠、日大三島に敗戦 前回決勝と同カード(朝日新聞デジタル)

全国高校野球選手権記念静岡大会第4日の15日、8球場で2回戦16試合が行われた。第3シードの市立沼津は浜松修学舎に敗れ、初戦で姿を消した。昨夏の決勝と同じカードとなった藤枝明誠日大三島は、延長戦の末、日大三島が雪辱を果たした。16日は2回戦16試合が行われ、第1シードの静岡が登場する。

【写真】九回に同点となる適時打を放ち、喜ぶ藤枝明誠の西村竜馬君=草薙


■延長への同点打「気持ちで打った」 藤枝明誠・西村竜馬選手

(15日、高校野球静岡大会 日大三島5―4藤枝明誠

 「王者」の肩書に苦しんだ1年だった。藤枝明誠は昨夏の大会で優勝し、甲子園に初出場。だが、新チームでは思うように結果が出なかった。1年前の7月26日、土砂降りの決勝で倒した日大三島。今までの苦しみを払拭(ふっしょく)するのに十分な相手だった。

 苦しい試合展開が続く。五回裏、失策が重なって3失点。打線は七回まで2安打に抑えられた。

 八回の攻撃前、光岡孝監督が叫んだ。「ここで回さなきゃ負けるぞ!」。ベンチも盛り上がり、八回に2点を返して2点差で迎えた九回。2死一、三塁の好機に2番の落合瞳伊(とうい)君(3年)の内野安打で1点返した。なお二、三塁。打席には昨年、唯一レギュラーだった西村竜馬君(同)。

 ここまで仲間たちは叫び続けていた。「竜馬に回せ!」。西村君も言っていた。「俺に回せ!」。西村に回せばなんとかしてくれる――。誰もがそう思っていた。そうして巡ってきた打席。フルカウントの末、打った球は覚えていない。「ただ気持ちで打った。思いが乗り移った」という打球は左前へ。土壇場で追いついた。

 西村君も、もがき続けてきた。「『2年連続甲子園』と騒がれたこともある。俺らも『いける』というのがあった」。だが、秋も春も県大会で1回戦負けし、チームの雰囲気はどん底に。「自分たちの野球ができない。もう、勝てないんじゃないか」。そう思った。それでも新入生が入って雰囲気も上向き、この夏を迎えた。

 延長でも勢いは衰えず、十一回には勝ち越しの好機もつくった。だが、相手の好返球で無得点に終わると、その裏、2死からサヨナラ負けを喫した。

 試合後、選手たちはベンチで声を上げて泣いた。光岡監督は言った。「120%出した結果。負けたけど、1年で一番明誠らしい試合だった」=草薙(堀之内健史)