「運とボール引き寄せる」2年間、毎日続けたトイレ掃除(朝日新聞デジタル)

(15日、高校野球南大阪大会 清教学園8―0布施工科)

 七回表、布施工科の攻撃。打席に向かう佐藤奎伸(けいしん)君(3年)は集中しようと、ヘルメット越しに頭を2回たたいた。思い出していたのは四回の守備。飛球を左翼線まで追いかけたが落球。大量失点を呼び込んでしまったと責任を感じていた。

 「打撃で取り返す」。2球目の直球を振り抜くと、打球は左中間で弾むのがみえた。三塁を陥れようと必死に走ったが、好返球に阻まれアウト。次打者も三振に倒れ、コールド負けとなってしまった。

 布施工科には、4年前から守備の要の遊撃手が続ける験担ぎがある。グラウンド脇のトイレ掃除だ。運やボールを引き寄せるそうだ。佐藤君は正遊撃手になった2年前から、ほぼ毎日床の砂を水で流し、便器をブラシで磨いてきた。

 敬遠されがちなトイレ掃除だが、佐藤君は汚れを見つけると進んでブラシを手にする。森実達郎監督も「諦めずに我慢できる選手になった」と成長を認める。卒業後は就職する予定の佐藤君。「験担ぎは失敗。でも、人として成長できると信じている。社会人になっても、みんなが嫌がることを率先してやっていきたい」と笑った。(渡辺元史)