部員不足の近隣校に派遣の2人 とけ込んでともに悔し涙(朝日新聞デジタル)

(16日、高校野球東東京大会、九段7―0大田桜台)

 6点差をつけられた七回裏、1死走者なしで大田桜台は代打を送った。背番号10の小坂拓海(2年)。立正大立正から派遣された選手だ。「何が何でも出塁するぞ」。2球目を中前に運んだ。次も同じく立正大立正の渡部竜成(2年)だったが、中飛で倒れた。

 そして主将の和田光太郎(3年)が打席に立った。「かっとばせ、かっとばせ光太郎!」。スタンドからの大きな声援は、敗退した立正大立正の1、2年生の野球部員約70人だった。和田は二塁打を放ったが得点につながらなかった。

 小坂と渡部はこの大会に限って加わった。日本高野連が認める措置で、部員数不足校が部員を貸してもらい公式戦に出る。立正大立正からはこの2人の応援を得た。借り入れる高校の部員は5人以上で、借り入れ後の部員数が10人を超えないなどの条件を満たせば利用できる。

 大田桜台は今春、1年生が入部せず、選手は8人だった。両校は徒歩5分ほどと近く、土日には一緒に練習をすることもある関係だ。立正大立正の内田和也監督は「うちで21、22番目にあたるような選手。貢献できると考えた」と話す。

 2人が大田桜台の練習に参加したのは大会の2週間ほど前。「うまくコミュニケーションが取れるか不安だった」。そんな小坂の心配はすぐに消えた。練習が始まり、硬い2人に大田桜台の選手たちは積極的に話しかけた。練習の狙いを説明したり、守備でカバーに入ることを指示したりした。2人も持ち前の明るさでチームにとけ込んだ。

 そして迎えた大会。2戦とも渡部は9番三塁手で出場。初戦の青稜戦に勝ち、創部以来初の夏2勝を目指したが九段に0―7で八回コールド負けを喫した。小坂は涙が止まらなかった。「少ない人数で努力する姿勢を学んだ。一緒に練習することが楽しくなっていった」。渡部は「練習や試合で貴重な経験が積め、感謝の気持ちでいっぱい」。主将の和田は「2人が加わってくれなかったら、僕らは出場できなかった。1勝のうれしさも味わうことができた。一緒に戦ってくれて、ありがとう」。=神宮第二(山田知英)