球場で「もぎり」やり再燃した野球愛 乱調克服のエース(朝日新聞デジタル)

第100回全国高校野球選手権記念東・西東京大会(朝日新聞社、東京都高校野球連盟主催)は15日、東西合わせて18試合があった。東大会では、第2シードの上野学園が七回コールドで初戦敗退。城北は九回に代打小川諒介(3年)の満塁本塁打などで7点を奪い、学習院に逆転勝ちした。西大会では、桜美林タイブレークにもつれた打撃戦をサヨナラで制し、2年連続の優勝を目指す東海大菅生は五回コールド勝ち。昨夏準優勝の早稲田実早大学院との「早稲田対決」で八回に逆転し、4回戦へ進んだ。16日は、東西計16試合がある。

【写真】明星のエース石井=ネッツ多摩昭島


桜美林16-15明星)

 シーソーゲームで息つく間もない試合展開となった。昨秋の都大会8強の明星と今大会シードの桜美林。両チーム計44安打の乱打戦は延長十二回で決着がつかず、無死一、二塁から始まるタイブレークへ。十三回表に明星が2点を入れた直後に、桜美林が3点を返しての決着となった。

 明星の主将で捕手の渋谷翼(3年)は「投手陣がよく投げた」と振り返った。先発は石井南果(なむか、3年)。五回以降は岡部幹太(2年)が救援し、8回3分の2を粘投。石山敏之監督も「いつかは負ける。最高の負け方だった」と健闘をたたえ、「岡部幹は来年は投球も打撃も中心選手に」。

 その岡部幹が「努力する姿を見本にし、夢を引き継ぐ」と尊敬するのが石井だ。石井は今大会、初めて背番号1で公式戦マウンドに上がった。

 1年生の冬。突然打者に向かって投げられなくなった。投げた球は捕手のはるか頭上のフェンスに突き刺さった。部を辞めるかどうか悩みながら迎えた昨夏。大会は登録メンバーから外れ、府中市民球場でチケットもぎり担当。しかし、「夏」に触れ、自分は野球が好きだと再確認した。夜11時ごろまでシャドーピッチングを欠かさなかった。少年野球時代から息子の投球をビデオで撮影してきた父の孝さん(52)と映像を見て2人でフォームをチェックしたことも。そんな二人三脚で、背番号10で臨んだ春の大会に強豪相手に好投し、今夏、エース番号を勝ち取った。

 試合後、石井は「悔しい。もう一度投げたかった」。一方で「ピンチに仲間がマウンドで『お前が打たれたら仕方ない』と言ってくれた。楽しかった」。

 シード校を倒しベスト4以上という目標は達成できなかった。「でも来年は期待できる。幹太に託す」

 石井家が撮ったこの日のビデオが参考になるかもしれない。=ネッツ多摩昭島(木村浩之)