夫が認知症「もう疲れた」=高齢の妻、負担重く―長引く避難、岡山・真備(時事通信)

西日本豪雨で堤防が決壊し、甚大な被害が出た岡山県倉敷市真備町地区。

 認知症の夫(83)を抱え、自宅近くの小学校に避難する女性(78)は「もう疲れたよ」とつぶやいた。避難所生活が始まって1週間余り。夫の症状は悪化し、周囲にも気を使う。自宅は浸水し、片付けもままならない。高齢の身に、負担が重くのし掛かる。

 「お父さん、逃げるよ」。豪雨に襲われた6日夜、夫に避難を促した。夫婦2人で暮らす家。夫は「ここにいる」と応じず、救援のボートに助けられた。女性は「今でも自分の置かれた状況を分かっていないのだろう」と話す。

 避難所で暮らし始めてから、夫に以前は見られなかった症状が出始めた。同じことを何度もつぶやき、他人の薬を自分のものと思い込んで飲もうとする。「一人にしておくと、他の人に迷惑を掛けてしまう」。親族に自宅の片付けを頼み、夫の世話を続けている。

 夫の精神状態が不安定になるのが心配で、自宅は見せられない。貴重品を回収したときは、夫を親族に任せて自宅に戻り、猛暑の中で作業した。

 避難所の小学校では、近所の顔見知りと同じ教室で暮らしている。「気にしないでいいよ」と声を掛けられるが、その言葉さえ重荷に感じてしまう。「この先どう生活していくか。身内にも、あまり迷惑は掛けられない」。不安が頭をよぎり、まともに眠れない。

 「看てくれるところがあったら、もう預けたいよ」。ホテル生活も考えたが諦め、しばらくはこの避難所に身を寄せるつもりだ。

 避難所で活動する徳洲会医療救援隊の看護師石崎菜実子さんは、「熊本地震では要支援者らと家族を集める福祉避難所があったが、現状ではつくれていない。専門の福祉チームや地元の保健師につないだり、介護施設に入れてあげたりすることが、患者や世話をする家族のためになる」と話した。