W杯の主役モドリッチ、原点には過酷な幼少期の体験が…(朝日新聞デジタル)

(15日、フランス4―2クロアチア ワールドカップ決勝)

 敗れてなお、大会の最優秀選手に選ばれた。試合会場を包んだ大きな拍手。クロアチアのMFモドリッチは、誰もが認める、大会の主役だった。

【写真】後半、フランスに3点目を奪われ、腰に手をあてるクロアチアモドリッチ=長島一浩撮影

 フィールド選手ではチーム最年長の32歳は、誰よりも仲間のために走った。身長172センチの体を張ってピンチの芽を摘み、多彩なパスで味方のチャンスを膨らませた。決勝という大舞台でも、自分の仕事をやり抜いた。「後悔はない。我々は、胸を張っていい」

 スペイン1部の名門レアル・マドリードでも背番号10を背負う司令塔。普段は物静かな性格だが、ピッチ上でのプレーは雄弁だ。受け手の欲しがるところへ正確に届くパスで、ポルトガル代表のFWロナルドら自己主張の強いトップ選手たちの信頼を勝ち得てきた。クラブに在籍してから4度の欧州チャンピオンズリーグ制覇は、モドリッチの存在抜きにはなし得なかった。

 華々しいキャリアとは、対照的な幼少期を送った。1990年代の旧ユーゴスラビア紛争に巻き込まれ、故郷を追われた。水も電気も来ていないホテルに身を寄せ、爆発音や銃声を聞きながら育った。ホテルの小さな駐車場でボールを蹴っているときだけは、明るい未来を思い描くことができた。「人生には良いことも、悪いこともある。苦しみの中でも自分を信じ、成功を目指すことが、モチベーションになっている」

 自身3度目のW杯。過去2大会は1次リーグ敗退だった。主将として臨んだ今大会は過去最高成績の3位を上回り、初の決勝まで導いた。(清水寿之)