主審もVARを“二度見”ためらい感じさせたPK判定 W杯決勝の流れを左右(デイリースポーツ)

W杯ロシア大会決勝のフランス-クロアチアで、試合の流れを大きく左右したPKの判定が世界的な議論となっている。1-1で迎えた前半34分、フランスの右CKからのボールがエリア内でクロアチアペリシッチがハンドリング(手や腕でボールを扱うこと)の反則をとられたものだ。結果としてこのPKでリードを奪ったフランスが試合の主導権を握り、2度目の優勝を果たした。

 まず、誤解されることもあるが、GK以外の選手の手にボールが当たっても全てが反則にはなるわけではない。日本サッカー協会が公開している「サッカー競技規則2017/18」の12条「ファウルと不正行為」の項目には「ボールを手または腕で扱う」の欄があり、「競技者が手または腕を用いて意図的にボールに触れる行為はボールを手で扱う反則である」とされている。

 また、「ボールの方向への手や腕の動き(ボールが手や腕の方向に動いているのではなく)」、「相手競技者とボールの距離(予期していないボール)」を考慮することや「手や腕の位置だけで、反則とはみなさない」ことなども付記されている。

 まず、今回のケースではペリシッチの左手にボールが当たっているのは確かだ。問題はこれが意図的かどうか、ペリシッチが予期できたかどうか。CKの場面なので守備に入ったペリシッチの方にボールが入ってきてはいる。ニアに飛び込んだフランスのマトゥイディが目隠しになるようになり、突然出て来たボールに触れた形になった。背後にクロアチアの選手がおり、クリアされていた確率も極めて高く、決定機を阻止したとは考えにくい。

 ただ、ビデオを見る限りではペリシッチが手を“ボールに振り下ろした”ようにも見える。手を下げた際に偶然、ボールが飛んできたようにも見える。今大会から導入されたビデオアシスタントレフェリー(VAR)によるビデオ映像を確認した主審は、一度、モニターを離れてから、再びモニターに戻る“二度見”をしてからPKを宣告した。悩んだ末に主審はペリシッチの意図があったと判断したと考えられる。

 一つ言えるのは、VARがなければ、このPK判定は下されなかっただろうということだ。繰り返し確認したからこそ、ペリシッチに意図があるかもしれないと疑えるのであって、一瞬の判断では歴史的な試合の流れを決するPKは告げにくい。“ビデオ”という物証が主審の背中を押した形になった。反面、繰り返し映像を見ることで、生でプレーを見た時の心証が変化することも考えられる。

 ハンド狙いのプレー(今回フランスが得たPKはまったくの偶然だが)が増えると、ゴールを狙うサッカーの醍醐味(だいごみ)は薄れる。そうした懸念は強まるが、反面、ゴール前での不当なホールディング(相手をつかむ反則)が減り、クリーンなプレーが増えることも考えられる。DF受難の時代となるが、VARが採用される試合はまだ限定的。その都度、選手は対応していくしかないだろう。